航空機のおはなし

NASAの火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が初飛行!何がすごいのか?

こんにちは、フライト兄貴です!

先日こんなニュースが話題になりましたね。

【ワシントン=船越翔】米航空宇宙局(NASA)は日本時間19日夜、火星探査車「パーシビアランス」に搭載していた小型ヘリコプターの飛行試験に成功したと発表した。地球以外の天体で、ヘリが飛んだのは初めてという。

読売新聞オンライン

このニュース、Twitter等でみなさんの反応を見ていると反応が大きく二つありました。

「火星で本当に飛ぶとは!これは歴史的快挙だ!!」

「すごいんだろうけど、何がすごいのかわからないw」

そこで航空整備士目線でこのニュースのすごさを解説していこうと思います。

こんな方に向けて書きました

  • 航空整備士に興味がある
  • 進路に迷っている
  • 最も確実に整備士になれる道が知りたい

※あくまで一航空整備士としての意見です。
 宇宙の専門知識は無いので、そこはご了承ください_(._.)_

この記事をご覧になることで、火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が行った40秒間のフライトの意義が理解でき、今後その成果が宇宙開発においてどう活かされるのかがわかります。

ぜひ最後までご覧ください。

結論

火星でのヘリコプターのフライトが難しい理由は大きく二つ!

  • 大気が薄く、飛び上がるだけの揚力を発生することが難しい
  • 地球と火星の距離がものすごく遠く、遠隔操作ができないこと

今後の展望については

  • より遠く、より高く、より大型の火星探査ヘリコプターの実用化
  • 軌道からの映像や地表を走るローバーでは難しかった探査の実現

が見込まれています。

さて、詳しく説明していくよ。

ここが難しい!火星での飛行

出典:NASA

大気が薄い

火星の大気は二酸化炭素が主成分で、大気圧は地球の100分の1、わずか1%しかありません。

一方、重力は地球の3分の1です。

これを地球の高度で換算するとなんと10万フィート(3万メートル)ですよ!

これが何を意味するかというと、地球で飛んでいるヘリコプターをそのまま持っていくと…

ヘリコプターを浮かせる力(揚力)が地球の1%しか発生させられないのに、重さは地球の3分の1もあるということです。

いつまでたっても浮き上がりませんw

ちなみに一般的なヘリコプターが飛べる最高高度は20,000ft(約6,100m)程度で、離着陸となるとはるかに条件は厳しくなるぞ。

じゃあどうする!?

  1. 回転翼を大きくする + 回転速度を上げる ⇒ 揚力を大きくする
  2. 機体の軽量化をはかる

1.回転翼を大きくする + 回転速度を上げる ⇒ 揚力を大きくする

ローターの面積を大きくするのと、回転速度を上げるのはどちらも発生する揚力を大きくする効果があります。

ただし!

翼端の速度が大きくなりすぎると衝撃波を発生させるため、限界があるのも事実です。

インジェニュイティのローター回転数は3000rpmだそうです。
1分間に3000回転するということですね。

有人ヘリコプターの一般的な回転数は300~400rpm程度だ

ローター直径は大きくちがうので単純にくらべることはできませんが、有人ヘリコプターの10倍近い速さで回っているんですね。

また、遠心力は回転数の二乗に比例して大きくなるので、強度限界という観点でも限界が設定されます。

2.機体の軽量化をはかる

出典:NASA

元々宇宙機ですから、相当な軽量化の努力がされています。

それでも大気が希薄な火星で飛行は実現できずに、バッテリーの小型化とか、軽い新素材の技術開発を長年待っていたようです。

また火星の夜は-140℃にもなるので、機器の保護のためにヒーターを搭載する必要もあるそうな。

飛行には必要のないヒーターの分まで軽量化する必要があったのが、火星での飛行を難しくした一因でしょう。

火星との距離が遠い

出典:NASA

地球と火星の距離は7500万キロ~3億キロも離れています。

最接近時ですら光の速さで4分もかかります。

そうなると地球からの遠隔操作は不可能で、インジェニュイティ自身で完全な自律飛行を行う必要があるのです。

離着陸時のわずかな出力調整や、突風などの外乱への修正操作など、高度な制御が必要となります。

地球上においても完全な自律飛行をするヘリコプターはいまだ実証実験レベルなのでその難しさがわかりますね。

ヘリコプターの操縦は飛行機より難しいんだ

インジェニュイティは搭載したカメラによって火星地表の地形をモニターしながら、機体に装備した各種センサーによって自分の姿勢や速度を検知して飛行したようです。

技術の進歩はすごいですね!

今後の展望

今回のインジェニュイティの飛行の目的は「実証実験」でした。

火星で飛行する事そのものが目的だったわけですが、この先どんなことに活かされるのでしょう。

一つは、火星ヘリコプターの実用化に向けてより高く、より遠くへ、より大型ヘリコプターを飛ばすためのステップとして技術、ノウハウの蓄積を行うようです。

二つ目は火星ヘリコプターが実用化すれば、いままでローバーなどで立ち入れなかったクレーターの中や山の上、それに断崖の様子を観察することも出来るでしょう。

火星探査の幅が大きく広がりますね。

人類の火星への移住も実現するかもしれません^^

まとめ

火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が日本時間の4月19日に火星で初飛行を達成しました。

これはライト兄弟が1903年に人類初の動力飛行を成し遂げた歴史的快挙に並ぶ偉業だと考えています。

大気の薄い火星での飛行、完全な自律制御が求められる環境での飛行、とても難しい課題がいくつもあったと思いますがさすがはNASAですね。このまま宇宙開発をリードしていってもらいたいと思います。

以上、『NASAの火星ヘリコプター「インジェニュイティ」が初飛行!何がすごいのか?』について解説しました。

そういえばこのインジェニュイティ、以前紹介した二重反転ローターでしたね。

こちらの記事で少しだけ紹介しているので読んでみてください^^

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