こんにちは、フライト兄貴です。
今日は『なぜ航空機にはタービンエンジンが使われるのか』
という質問について解説したいと思います。
実地試験でも聞かれるかも?的なテーマです。
さて、世にある航空機のほとんどはタービンエンジンを採用していますね。
小型機では一部ピストンエンジンが使われていますが限定的です。
それはなぜでしょうか。
ピストン、タービンってどんなエンジン?
この質問に答えるにはまずそれぞれのエンジンの概要を知っておく必要があります。
ピストンエンジンとは?
シリンダー内で燃料と空気の混合ガスを断続的に圧縮,燃焼させてピストンを動かし,その往復運動を回転運動に変えてプロペラを回すエンジン。
一つのピストンで吸気、圧縮、燃焼、排気の4工程を行うため、4サイクル・エンジンとも呼ばれる。
車のエンジンと言えば分かりやすいですね。
タービンエンジンとは?
吸気・圧縮・燃焼および排気の各工程の仕事を機能的に配置された個別の構成要素で行うことで連続的に出力を出すよう設計されたエンジン。
ピストンエンジンが断続的な燃焼であるのに対して、タービンは連続燃焼で一定の回転数に達したら自立運転することができます。
タービンエンジンの中にはターボジェットエンジン、ターボファンエンジン、ターボプロップエンジン、そしてターボシャフトエンジンがあります。
航空機用エンジンの要件とは
次に航空機用エンジンに求められることは何なのか、という事ですが、
主に次の7つです。
- 出力に対して小型・軽量であること
- 燃料消費が少なく、安価な燃料が使用できること
- 信頼性、耐久性に優れていること
- 振動が少ないこと
- 運転が容易なこと
- 整備性が良いこと
- 環境適合性が良いこと
それではひとつづつ解説していきます。
① 出力に対して小型・軽量であること
小型軽量だと何が良いかというと、人や荷物をより多く載せられるという事です。
これを有償荷重と言います。
もしくは燃料を多く積むことで航続距離が確保できるようになります。
また全面面積が小さいことも求められます。
② 燃料消費が少なく、安価な燃料が使用できること
これは車でも同じなので分かりやすいですね。
燃費が良いと航続距離も増えますし、ランニングコストが安くなります。
安価な燃料とは何かというと、ピストンエンジンとタービンでは使用する燃料が違います。
これは後述しますね。
③ 信頼性、耐久性に優れていること
そのままや(雑)
④ 振動が少ないこと
振動は搭乗者の快適性だけでなく、装備品や機体構造などの疲労強度の確保や寿命に影響を及ぼします。
計器類の視認にも影響がありますね。
ひいては安全性に影響するという事です。
⑤ 運転が容易なこと
これは「誰でも操作できる」という事ではなく、
・外気条件や気象条件、飛行姿勢の変化による影響が少ないこと
・緩速から最大出力まで安定して運転が可能なこと
を意味します。
つまり安定した運転が可能ということですな。
⑥ 整備性が良いこと
整備性は機体のダウンタイム、ランニングコストに繋がります。
⑦ 環境適合性が良いこと
環境適合性、受験生の皆さんはどこかで聞いたことがあるのでは?
騒音や有害な排出物のことですね。
タービンエンジンの利点欠点は?
タービンエンジンの利点欠点を理解することは、その裏返しでピストンエンジンの利点欠点も抑えることができます。
それでは順番に見ていきましょう!
〇:重量当たりの出力が大きい
連続燃焼で短時間に多量の空気を処理することができるため、出力が大きくなります。
ピストンエンジンと比べると2~5倍の出力にもなります。
〇:振動が少ない
タービンエンジンは回転部分だけで構成されており、振動が極めて少ない。(往復運動がない)
〇:始動が容易で暖機運転が不要
ピストンエンジンは往復運動のため摺動部があります。対してタービンエンジンは回転運動のみで、支持もほとんどボールベアリングを使用しています。
そのため指始動が容易で暖機運転も不要です。
〇:滑油の消費が少ない
ピストンエンジンでは常時少量の滑油が燃焼して消費していくのに対して、タービンエンジンではほとんど消耗する潤滑部分がありません。
〇:燃料費が安い
タービンエンジンで使われるいわゆるジェット燃料ですが、安価なケロシン(灯油系)を燃料にしているため燃料費が安く済みます。
対してピストンエンジンは高価な航空機用ガソリンを使用します。
×:熱効率が低く、燃料消費率が高い
タービンノズルガイドベーンやタービンブレードの耐熱温度により、燃焼ガス温度が制限されます。
そのためピストンエンジンより燃焼温度が低く効率が悪いです。
×:製造コストが高い
構造が複雑で高価な耐熱材料が要求されるため、非常に高価なエンジンとなってしまいます。
×:加減速に時間がかかる
高速回転しているため慣性が大きく、燃料流量を変化させても出力が変化するまでにタイムラグが生じます。
×:減速装置が必要で構造が複雑になる
ピストンエンジンよりも回転数が一桁多いです。
そのため減速装置を用いて回転数を落として使用する必要があります。
×:環境適合のため改善が必要
騒音や排気ガスに含まれる大気汚染物質の排出規制が強化されていくため、対応するための改善や技術革新が必要になります。
まとめ~なぜ航空機にはタービンエンジンが使われるのか~
それでは最初の問いに戻ります。
「なぜ航空機にタービンエンジンが使われるのか」
それは一言でいうと、『高出力が必要なため』です。
タービンエンジンは高出力になってもエンジンの大きさはさほど変わりません。
タービンと同じ出力をピストンで出そうと思うと巨大で重くなります。
すると自分を飛ばすことにばっかり力を使って、ちっとも有償荷重は増えないのです。
最後にタービンエンジンの利点欠点をもう一度まとめておきますので、これは頭に入れておいてください!
タービンエンジンの利点
- 重量当たりの出力が大きい
- 振動が少ない
- 始動が容易で暖機運転が不要
- 滑油の消費が少ない
- 燃料費が安い
タービンエンジンの欠点
- 熱効率が低く、燃料消費率が高い
- 製造コストが高い
- 加減速に時間がかかる
- 減速装置が必要で構造が複雑
- 環境適合のため改善が必要