ピトー管とは?何を測るもの?
ピトー管(Pitot Tube)とは、航空機の進行方向に向けて取り付けられる計測器です。
管の先端と側面に穴が開いており、それぞれが内部でつながる構造となっています。
そして管内に流入する空気の全圧(Total Pressure)と静圧(Static Pressure)の差圧を動圧(Dynamic Pressure)が求められます。
つまりピトー管とは、圧力を測る計測器です。
よくピトー管で速度を測っていると勘違いしている方がいますが、ピトー管で分かるのは圧力だけです。
その圧力と『ベルヌーイの定理』を用いて計器側で速度を算出したり表示しているのです。
ちなみに静圧孔が付いていないピトー管もあり、その場合静圧は機体の底面や側面に付いている静圧孔の圧力を使用しています。
ベルヌーイの定理とは?
さて、先ほど少し出てきた『ベルヌーイの定理』とはなんでしょうか。
ベルヌーイの定理とは『一つの流れの中において全圧(動圧+静圧)は常に一定である』
という定理のことで、エネルギー保存則の一つです。
ピトー管で計測した圧力をこのベルヌーイの定理の式に当てはめると次のようになります。
そしてこの式を変形すると
となり、速度Vが算出されるというものです。
ピトー管で得た圧力は何に使われている?
ではピトー管で得た圧力は何に使われるのでしょうか。
速度計
そうですね、速度計です。
速度計では前述のベルヌーイの定理を利用して、速度を表示しています。
つまり空盒計器の速度計にはピトー管からの「全圧」と静圧孔からの「静圧」2つの配管が接続されているということになります。
高度計、昇降計
静圧孔が付いたピトー管を装備した航空機の場合は、その静圧が高度計や昇降計の表示に使われることもあります。
ピトー管に静圧孔が無く、機体側に静圧孔が装備されている場合は、ピトー管と高度計・昇降計の接続はありません。
エアデータ・コンピュータ
ピトー管で得た圧力は直接表示される空盒計器以外にもエアデータ・コンピュータへ入力されます。
エアデータ・コンピュータでは様々なセンサーから情報が集まり、それらをコンピュータで計算することによって違うパラメータを算出することができます。
例えばピトー管からの圧力を基に、温度や気圧の情報を補正に使うことでTAS(True Air Speed):真対気速度を算出したりしています。
ここで算出されたパラメータはデジタルデータとして出力され、オートパイロットなどの制御に使用されるほか、PFDやEFISなどの統合電子計器で表示されます。
ピトー管以外で速度を知る方法はある?
ここまで航空機の速度を表示するためにはすべてピトー管からの圧力を基に表示・計算されていました。
ではピトー管以外の方法で速度を知る方法はあるのでしょうか。
答えとしては『対気速度を知る方法はピトー管以外にない』です。
では対地速度はどうでしょうか。
逆に対地速度を知りたければピトー管は何の役にも立ちません。
GPSか、INS(Inertial Navigation System):慣性航法装置を使用して知ることになります。
こちらはGPS装置の画面の例ですが、右下の「GS」というのがGround Speed、つまり対地速度です。
実際に飛んでいるときは対気速度計の表示と、GPSのGSを比べることで風がどのくらい吹いているのか、簡易的に知ることができますね^^
問題:ピトー圧系統の配管で漏れが発生した場合、対気速度計の指示はどうなる?
さて、突然ですが練習問題です。
ピトー管系統の配管で漏れが発生した場合、対気速度計の指示はどうなるでしょうか。
条件:非与圧部で漏れが発生したと仮定します。
答え:対気速度計は低い指示となる
理由:配管に漏れが発生することにより全圧が減少することから、静圧が一定であれば動圧は小さくなるため。
参考:速度計、高度計、昇降計の仕組みがよく分かる動画
空盒計器っていまいちピンとこないですよね。
開放型空盒、密閉型空盒?ダイヤフラム?
中身見たことないし分かんねーよ!って感じですよね。
この動画を見ればピトー管の全圧、静圧がどう使われているか、よく分かると思います。